前回、今から10年前の2007年、邱永漢先生の
予言に導かれて、ベトナムを訪れたと書きました。
当時の邱先生の文章をここに紹介します。


「世界でこの次、経済の発展する国々を
BRICsという言葉で現わしたのは
どこの国の何という人か知りませんが、
アメリカかヨーロッパの、
それも数字で物を見る癖のある人に違いありません。
心理的に自分たちに近いところからはじまっているので、
ブラジルがトップに出て来ているし、
またGDPの数字を基準に物を考えているので、
ふえた数字がどういう配分になっているか無視しています。
それ以上に無視されているのが
国民の勤労意欲と労働力の生産性です。

最近、私はブラジルに行っていませんが、
インドとロシアには昨年、行ってきました。
中国では、ご承知のように、1年の半分以上をすごしており、
全国を駆けまわっています。
だから中国をえこひいきしているわけではありませんが、
工業化の進むスピードと都市の開発と変貌から見る限り、
中国、インド、ロシア、ブラジルと
ちょうど順序が逆になっているのではないでしょうか。
ロシアとブラジルの順序が逆になっている
という見方もあり得ないことではありませんが…。

次に経済成長の数字だけで比べていますが、
石油やその他の天然資源の開発がすすみ、
しかも国際価格の大暴騰によって
それがGDPの数字を押し上げていると言っても、
その収入の大半が政府のふところに入って、
国民一人一人のポケットにまわらない場合も
同様に経済成長として扱われていますが、
国民が豊かになるのと、
国の発言権が強くなるのを同列におくことは、
経済成長に対する人々の見方を誤らせることになると思います。

経済的に豊かになるということは、
生産過程における付加価値がふえることによって
もたらされるものであって、
ロシアや中近東の政府や王様たちのふところが肥えることと
同列におくべきではないのではないでしょうか。
そういう視点から見ると中国に続くのは
ロシアやインドでなくて、ベトナムだと私は感じています。」
(出典:「もしもしQさんQさんよ」
     第2637回。2007年5月25日「中国の次はベトナムと感じています」。

     邱永漢著『中国投資はジェットコースターに乗って』(グラフ社刊)に収録)