2012年11月

「持っている中国株の大半は売りました、

残りの株も売りに出しています」とおっしゃる方が

おらますが、反対に、

「これから中国株を買いたいんです」とおっしゃる方も

 おられます。

 

「これから邱永漢先生に学んで

中国株を買おうと思い、邱友会に三度参加したのですが

先生が亡くなられたので、どうしたらいいか困っているんです」

とおっしゃる方に先日、お会いました。

 

邱先生の代わりができる人は誰もいないと思いますが、

そのとき、私は先生が15年ほど前に書かれた

『一番悪い時が一番のチャンス』(1998年)

という本を持っていましたので、

思わず、その方に差し上げました。

 

「人はとかく、株が上がると、遅れをとっては

いけないと思って、株を買いに走りますが、

こういう時は株を買うのは控えた方がいいのです。

反対に株が下がりだすと、永遠に下がり続けるような

気持ちになり、株を買う人はほとんどいなくなります。

 

でも、株の下落はどこかで止まり、反転に転じます。

どこで反転に転じるかを言い当てることはできませんが、

いつかは、陰から陽に転じます。

ですから、株が下がり続けているようなうな
”悪い時”は
株を買うチャンスなんです。

じっと我慢していれば、いずれ、株価があがる時期が

やってきますので。

いま、中国株は下げに下げていて、

中国株を持っている人はうんざりしていますが、

あなたのようにこれから買いたいと

思う人にとては、今は株をチャンスだと思います」と言い、

初心者ですので、買うに適した銘柄の名前も紹介しました

 

 

 

私が下がり続けている中国株を

持ち続けているのは、成長率は下がるかも知れないが

これからも中国は成長を続けるだろうという見方を

しているからです。

 

これは私の主観に過ぎませんが

まえに、紹介した林 毅夫という北京大学の先生が、

2009年に刊行した『北京大学 中国経済講義:』

(日本語版は2012年6月刊行)で次のように述べています。

 

(1)中国は1978年以降、東アジア諸国と同じ道を

たどることになった。それから30年位上位にわたり
中国は9%の成長率を維持した。

 

(2)中国はこのような高度成長をあと20年またはそれ以上

続けることができる。その根拠は次の通りである。

 

(3)2008年の中国人の1人あたりの所得は米国の21%に

過ぎなかった。中国と米国の所得格差は大きく、

この格差がなくなるまで中国は後発性の利益を享受し続けるだろう。

 

(4)ある推計によると、

現在の中国の米国に対する相対的な地位は

1951年の日本、1975年の台湾、1977年の韓国

の米国に対する相対的な地位に似ている。

 GDPの成長は、

日本では1951年から1971年にかけて9.2%、

台湾では1975年から1995年の間に8.3%、

韓国では1977年から1997年の間に7.6%であった。

1979年の改革以降における中国の開発戦略は、

日本、韓国、そして台湾のそれに似ているため、

今後20年間にわたって、8%の成長を達成する可能性がある。

 

以上です。

1951年(=昭和26年)の日本と言えば、

1943年(=昭和18年)生まれの私などが

8歳の時で、小学校の1,2年生の頃のこと。

 

それから20年後の1971年(=昭和46年)は

28歳で入社後5年、二人目の子供を授かったころのことで

この間の日本の発展と言えば欧米先進国の人たちが

目を見張るくらい大きなものでした。

 

この日本の体験と同じような発展を

中国も享受することになるとと思っていますので、

林先生の推理に賛成です。

最近、私が出会った方は

「中国株を続けているけれども、

以前は良いことがあったけれど、

近頃は持っていてもいいことは一つもない。

だから大半の中国株を売却した」

とおっしゃいました。

 

私も、中国株を持ち続け、

ほぼすべての銘柄の株価が下落を続けているので

「近頃は持っていてもいいことは一つもない」

という感想は同じだと感じました。

 

ただ、私は下落している中国株を持ち続け、

仮にこの先、売ったとしても、別の銘柄を

買うことにしたいと考えています。

 

つまり、以前、中国株投資には妙味があると

考えているのです。

 

私も最近よく言われている中国経済減速の

ニュースから、8%、9%の成長を続けてきた

時代は過去のものとなってたと思っています。

 

また輸出で稼いだ外貨をテコに

大量の元通貨が発行され、この通貨が

不動産購入の借り入れに使われたことによって

不動産バブルが起こっていると考えています。

 

これらは私などが中国株投資を始めた

平成8年ごろには全くなかった経済現象で、

いまの中国株投資にはこうした新しいリスクが

起こっていると考えています。

 

ただ、よく言われるように中国の国民一人当たりの

富は新進国の10分の1程度に過ぎないので、

これからも世界の中で、トップ水準の成長が続き、

そのため、依然、中国株を持つメリットが

あると考えています。

私などが中国株を始めたころ、

邱永漢先生が、『ダメな時代のお金の助け方』(1997年)

を刊行し、発展途上国の上場会社への株式投資について

次のように言及されました。

 

「はじめにも言ったように、

方向を間違えなければ何とかなる。

方向さえ、間違えなければ

努力によって軌道の修正ができる。

 

たとえば、私は、台湾からはじまって、

途中、アメリカで道草を食ったが、

次に香港、中国と方向を変えた。

カンだけをたよって、

そういう方向に向かったわけではない。

どこに行くかを決めるまでにカナダにも行った、

オーストラリアやニュージーランドにも行った。

 

アジアでいえば、

韓国やシンガポールはもとよりのこと、

フィリピン、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、

ベトナム、タイ、ミャンマー、ネパール等々

一通りは見てまわった。

 

もしこれらの国々のなかで

三つだけ選べたらと言われたら、

私は中国、フィリピン、ベトナムの三国を選ぶだろう。

他の地域が駄目というわけではないが、

これから急激に経済の発展する地域を上から勘定したら、

そういう順序になると私は思っている。

 

しかし、これらの国々は

高度成長がまだ緒についたばかりだし、

外人投資家を安心させるような法律すらととのっていない。

したがって、

そういう条件の不備をおそれる人には不向きだが、

経済が発展するにつれて

自然にととのってくるのが投資環境である。

それがととのってからでは遅すぎるし、

ととのうまえではリスクが多すぎる。

どちらをとるかは人それぞれだろうが、

私はそれほどリスクをおそれたりしない。

虎が出るからといって尻こみをしていたのでは、

一生かかっても宝の山に分け入ることは

できないと思っているからである。」

 

こうして邱先生は中国での事業開発や中国への

上場会社への投をはじめ、中国株を始めた人の多くは

この先生の後について走る人が多かったと思います。

それから15年ほどの年月がたっていますが、

中国株投資にはもう妙味がなくなったのではないかと

感じる人たちが出始めています。

東京と大阪で株のセミナーを開き、

中国株に投資している人たちの悩みが

より深刻になっていることを感じました。

 

こういうとき、私たちはどうすればいいのかと

自問する中、「迷いの多い時は原則に戻れ」という

邱永漢先生の言葉が浮かんできました。

 

「迷いの多い時は原則に戻れ」

と題したハイQのコラム(2008年8月31日)で

先生は次のように書いておられます。

 

「私の本を愛読していただいている方なら

誰でもすぐ気がつくことですが、

私の本には原則とか法則とか言ったタイトルのついたものが

たくさんあります。『株の原則』『お金の原則』『商売の原則』

『生き方の原則』『変わる世の中、変わらぬ鉄則』とか、

一見、複雑な動きをするように見えても、

その中を貫く流れには原理原則があって、

それをきちんとキャッチして

流れに逆らわなければ生き残れると信じているからです。」

(注:本のタイトルについての原文の表現を修正しました)

 

さて、平成24年11月の今日、

戻るべき原則とは何でしょうか。

 

すぐに浮かんでくる原則は

「投資は通貨の強くなる発展途上国で」

(『ダメな時代のお金の助け方』1997年)

「投資は発展途上国で、生産は通貨の弱い国で」

(『一番悪い時が一番のチャンス』1998年)

です。

 

投資するなら、パイが大きくなるところがいい

という考えです。

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