ハノイの観光名所の一つに「文廟」(ぶんびょう)があります。
「文廟」とは孔子廟のことで、孔子の霊を祭るところで、
文廟という名の施設は中国の上海や済南にもあるようですが
ハノイの「文廟」は1070年にベトナムで最初の大学として開設されています。
この頃のベトナムでは中国同様の科挙が行われ、
境内の82のには、15~18世紀の間に行われた
科挙試験の合格者の名前が刻まれています。
これらの石碑は本殿に並んでいますが、
その本殿の前の庭に足を踏み入れたところ、
一人の小柄な女性が私達のところに
押しかけてきました。
「私はハノイ大学の日本語学部で
日本語を学んでいるものです。
近々日本語のスピーチのコンテストがあり
そのときに発表する日本語の文章を書きましたが、
誤りがないかどうか添削を
お願いしたいのです」
私も友人たちもその熱心さに心打たれましたが、
この場でちょこちょこ添削はできないよ」
と言いましたら、学生さんは作文と
自分の名前、インターネットでのメールアドレスを
書いた紙をたくさん用意していて、
それを私や友人一人一人に渡し
「お願いします」と頭を下げて懇請します。
私はこの女子学生の要請に応えたいと思いましたが、
持参したパソコンは前日の夜、ホテルで使ったところ、
なぜかネットに接続できません。
そこで、彼女の書いた作文を一読し、
気づいたところを4か所ほど指摘しました。
彼女は喜んでいましたが、この学生の
あまりに熱心な姿勢に心打たれてのことです。
こういう勉強熱心な若い人に接し、
ベトナムの明日は明るいと感じました。
経済の発展に必要なのは、優秀な「働き手」で
この学生さんは明日のベトナムを開くホープの
一人だと思いました。