2011年12月

世の中はどんどん変わっています。

たとえば、私なども朝から晩まで

コンピュータのお世話になっています。

 

好んでキーボードをたたき、

コラムを書いたり、友人にメールをしたり、

インターネットでいろいろなことを調べています。

こんなことは昔は考えられなかったことです。

 

こうした時代の変化に

人間はどう対応する生き物でしょうか。

人に聞くより自分の対応を見たらわかります。

 

私はいま68歳ですが、

15年前の53歳までは、

私はキーボードをたたいて

文章を書くことに強い抵抗を感じました。

 

「文章は紙の上にペンを持って書くものだ」

という観念がどっかりと頭の中に居座り

それ以外の手段で文章を書くと言う動きに

強い違和感と抵抗を覚え、受け入れようと

しなかったのです。

 

ですから、パソコンにタッチするどころから

パソコンから遠ざかるようにしていました。

そういう私の姿を見て、友人や家族はとても心配し、

「このままでは世の中に適応できない人になってしまう」

と危惧し、友人の一人が、やや強引な手段で

私がパソコン・スクールに通うようにしました。

 

そのおかげで、私は6万円の授業料を払って、

パソコン教室に数回、通うようになりました。

教室にはパソコンと言う新しい器具への対応に

戸惑っている年配者が多かったことを

覚えています。

 

こういうプロセスを経て、

私はしだいにキーボードになじみ、

友人とメールの交換をするようになりました。

この自分の体験を振り返ると、

人間は新しい変化に適応するより、

適応することに違和感を感じ、

抵抗する生き物だと感じています。

変化するものが何であるかとか、

年齢差にもよるでしょうが。

 

この20年ほどの間で、

私たちの目の前で起こった変化の一つは

中国の成長と発展です。

 

「これから中国が成長するので

中国の上場会社の株を買うとよい」

と言われだしたのは平成5年の頃です。

 

今でもよく覚えていますが、

平成5年のゴールデン・ウイークに行われた

邱永漢投資考察団で上海証券取引所を訪ね、

このとき、東洋証券のスタッフが同行し、

考察団に参加した日本人に対し、

中国株投資の口座開設手続きをしました。

 

また邱永漢さんもこの年の暮れあたりから

中国株投資を勧め、平成6年に

「中国株は前途洋々です」

という談話を発表しました。

 

邱さん自身が中国株を始めたのは

著書によれば平成9年のことのようですが、

この頃の中国の前途に対する

世間一般の受け止めは、きわめて懐疑的で

『中国株なんか買うとそのうち、

ボロ株の山になるのではないか』

というようなことが言われました。

 

それから数えて18年、

この間の中国の成長と発展は

目を見張るものがあり、

中国株を手に入れる人も増えてきました。

 

こうした時代の流れを受け、

私なども中国株投資の勉強会を

開き続けていましたが、

私の周辺でも中国株への投資で

財を成した人たちが現れてきました。

 

そうした人たちを見ると、

平成5年から平成10年くらいの間に

中国株にお金を投じた人たちです。

 

こうした体験から、

私はお金を増やそうと思ったら、

時代の変化に機敏に応じることだ

と考えています。

 

もちろん、中国は発展途上国ですから

これから中国株投資を始める人にも

財をふやすチャンスがあるとみていますが。

 

数回にわたり、50年ほど前に

アメリカのM.ロジャーズさんが明らかにした、

「商品(流行)普及の法則」と

「流行に対する人間の5種類の態度」を

日下公人の著作を通して紹介してきました。

ロジャーズさんの考えは

商品(流行)に対する人間の対応を見た

結果生み出された見方、考え方です。

 

この商品(流行)の普及に対する

M.ロジャーズさんの見方は

そのまま、一つの時代傾向(トレンド)への

人間の対応にも適用できるのではないか

と私は感じています。

 

というのは、私はいま

ベトナムの今後に関心をもち、

ベトナムのハノイ市やホーチミン市に行き、

上場会社を訪ねる活動を行っていますが、

こうした活動への人々の反応は多様です。

私の活動に参加してくれる方の多くは

「ベトナムは勢いがあるから、

これから経済を本格的に発展させる可能性が高い」

「勢いのあるベトナムでは

元気のいい会社が誕生する可能性がある」

「それらの会社の株を買っておくと

自分の財産を増やすことができるかもしれない」

「実際に会社を訪ねていろいろ質問したら、

この会社が伸びるかどうかの感触がつかめる」

といったことを考えてのことだと思います。

 

他方、ベトナムについては

「ベトナムは貿易赤字国とのことですね。

いつごろ、貿易黒字国になるのでしょうか」

「ベトナム通貨のドンが前に切り下げが行われました。

経済基盤がまだまだ弱いようですね。

通貨の安定が得られるのはいつごろのことでしょうか」

と前途に不安定さを感じ、静観の構えをとる人がいます。

数から言えば、前者の人たちは少数で、

後者の人たちが圧倒的多数を占めますが、

時代の潮流(トレンド)にどう対応するかも

ほんとうに人さまざまです。

 

 

「流行に対してどういう態度をとるかで

人間は5種類に分けられる」という

アメリカのロジャーズの説を

私などが紹介していただいたのは

日下公人さんの

『21世紀は女性の時代―この爆発力をどう利用するか』

という本をを通してのことです。

 

この本は昭和58年=1983年に出版されていますので

30年ほど前のことになりますが、

自分はどの種類の人間なのか

想像しながら、興味深く読んだものです。

その中で、いまでもよく覚えているのは、

日下さんが第一種の「イノベーター」(挑戦者)と

第五種の「ラガード」(伝統主義者)には共通性が

あるとコメントされていたことです。

日下さんの

『すぐに未来予測ができるようになる62の法則』にも

次のように書かれています。

「念のために付け加えておくと

以上のどれが良くて、どれが悪いということではない。

どれが賢くて、どれが愚かかといういうことでもない。

 

人間はそのような行動をする

5種類に分けられるということである。

それは何かがこの世に誕生して、

普及し、やがて博物館へ消えてゆく

その順番に登場する役者である。

 

それぞれの種類の人たちは、

自分たちの行動が正しいと思い。

また一定の合理性があるから

そにょうな行動をとっているのであって、

賢いか否かということは関係ない。

 

さらに言えば、面白いことに、

この5種類に分けられた人間のグループ間の

関係を見ると、イノベーターとラガードは

意外に近いのである。

両者とも信念の人であり、

行動と確信が一致し、世間の目を

意識せず、個性的、などの共通点がある」

 

流行に対する態度にもとづき

ロジャーズは人間を5つの種類に分類しました。

これまで、そのうちの

第一種の「イノベータ」(挑戦者、革新者)、

第二種「アーリー・アダプター」(初期採用者)、

第三種「アーリー・マジョリティ」(初期多数者)、

第4種「レイト・マジョリティ」(後期採用者)

についてのコメントを紹介してきました。

今日は第5種の「ラガード」(伝統主義者)

についての日下公人さんの説明を紹介します。

「最後は『ラガード』である。

その特徴を表現する言葉は『伝統』がぴったりである。

交際範囲は極端に狭い。

ラガード同士、あるいは

身内に限られることが多い。

 

すでに歴史の波に磨かれたものだけで

身の回りを埋めている。

それが誇りでもある。

自分はひとつの伝統的文化を担っていると確信し、

自分のような人間がいなければ、

わが国の、あるいはわが社の伝統は崩壊する

と思っている。

読書範囲は極端に狭く、

むしろ歴史物や伝記物、古典を愛読することが多い。

変化には鈍感と言うより無関心で、

新奇なものは軽蔑しがちである。

 

ラガードが採用する流行は、

もはや流行でなく、礼服的なものが多い。」

(出典:日下公人著「すぐに未来予測ができるようになる62の法則」)

 

と説明した後で日下さんは

「ただし、自分の頭で考え、自分の好みで選択し、

身近な人と苦楽をともにしようとする態度はもっと

見直されるべき人生態度である」とコメントしています。

 

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