2009年02月

昭和邱56年に邱永漢さんが刊行した『お金の使い方』
の中における邱さんによる日下公人さんの
『新・文化産業論』を紹介する文章の抜粋の続きです。

「その本(『新・文化産業論』)の中で、
日下さんはイギリス、フランス、アメリカが
その黄金時代にいかにしてその文化の基礎になるものを
築いたかを指摘している。

『イギリスは、1800年代にそれをつくった。
世界の政治・経済・金銭の中心としての自信と
自覚に満ちた当時の“イギリス紳士”。

当時は“イギリス人の一言”といえば
武士に二言はないとおなじ意味に使われるた
そうであるが、そのイギリス紳士の日常生活から
世界に普及した商品はダンヒル、ウイスキー、紳士服地、
競馬、ゴルフから英語の教科書まで枚挙にいとまがない』

『フランスは1600~1700年代に
その文化をつくった。
当時の宮廷文化から生まれた
商品群、什器、備品、建築、
それからとうてい書ききれないほどの服飾や料理の数々。
・・・・・太陽王と呼ばれたルイ14世は
愛妾ラ・ヴァリエールのためにヴェルサイユ宮殿を建てたほか、
女道楽を中心とする奢侈のため
国家財産の約三分の一を消費したと
ヴェルナー・ゾンバルトは言っている。

しかしその開発投資から生まれた商品群はその後、
数百年にわたって世界の民衆の喜びとなった。
もちろんフランス国民も数百年にわたってその恩恵に
浴している。

もし、ルイ14世が優等生的、模範的君主で
その富を殖産振興や民生向上に使ったとしたら、
それはおそらく農業用灌漑事業や道路・運河工事に
向けられたかと思われるが、その利益などは知れている。

盛大に遊ぶ国王を持ってフランス国民は
むしろ幸せだったかもしれない。』

『アメリカは第一次欧州に勝って
世界のひのき舞台に躍り出た1900年代初期のころ、
陽気でよく働き、フェアプレーを喜ぶ当時のアメリカ人の
気風から、アメリカ映画やスポーツや各種の
アメリカ風商品を生み、それらは多くの人の共感を
得て、世界に輸出され、アメリカのイメージを確立した。』

以上です。イギリス、フランス、アメリカの各国の
文化が生まれてきた背景が良くわかります。

ここ数日、日下さんの日本経済に対する見方を
眺めてきましたが、日下さんが、ご自身の
経済に対する見方を始めて世に明らかにしたのが、
昭和53年に発刊された『新・文化産業論』です。

発刊当時、私は知らなかったのですが、
この本の存在と価値の高さを教えてくださったのは
ほかならぬ邱永漢さんです。

邱さんは昭和56年の時に発刊した『お金の使い方』
という本の中で、日下さんの『新・文化産業論』を
次のように激賞しました。

「たとえば、紫禁城とか頤和園とかいった
清朝時代の王宮文化はどうみても金キラキンの
成金趣味である。大きいことを誇ったり、
金がかかったものを自慢している。
また清朝時代の王宮で使用された陶磁器の類は
カラフルなものが多く、幽美とか枯淡とかいった
概念からは程遠い。金銀、宝石、宝石をふんだんに
使ったものが彼らには美しく見えたのであろう。(中略)

そうした、成金たちに歓迎されたものが
一定の時間を経て定着すると文化と
呼ばれるようになるのである。(中略)
このことは西洋の文明文化についても同様に
あてははまる。(中略)

私はかねてから文化をそういうものとして
受けとっているが、最近のこと日下公人という
長期信用銀行部長さんの書いた『新・文化産業論』
という本を読んだ。

その中で日下さんが大変音白い論理を
展開しているのにぶつかった。表題だけ見ると、
何のことだかあまり明白でないが、
日下さんのいう文化産業とは『鉄は国家也』みたいな
生産から出発した産業構造から、消費者の嗜好に
出発した産業へ構造変化していく日本の新しい動きを
示しているのである。」(邱永漢『お金の使い方』)

この文章の続きは次回紹介します。

いま私たちの回りで起こっている
「時の流れ」について考えるうちに、
日下公人(くさかきみんど)さんの
最近の経済観をみることになりました。

日下さんは2000年に
『21世紀、世界は日本化するー超先進国・日本の実力』
という本を出し、この本の最終章は
「世界は江戸化、島国化」となっています。

それから7年たった2007年、
『あと3年で、世界は江戸になる』
という本を刊行しました。

この本の中で日下さんは
次のように述べています。
「これからの経済は風流経済であり、
風流経済はシニア世代がリードする。
私は1978年(昭和53年)に、
『新・文化産業論』と言う本を書いたが、
文化産業の担い手は若者とシルバーの両方である。

分かりやすくいえば、秋葉原と巣鴨になる。
風流という言葉には裏の意味があって、
それは、社会を離れ、社会を超えてなお、
なんとなく自分が満足するということである。

これまで仕事一辺倒で、社会性100パーセント
だった生活を終えた人が、もう同じことは
やりたくないという境地のことでもある。

日本の柔道の世界は、6段止まりで、
あとは年を獲ると7段をくれる。
それは実力ではないが、そういう世界が
日本にはある。実はこれと似た文化は日本だけでなく
ヨーロッパにもある。

しかしヨーロッパは貴族主体の世界で
風流といっても、どちらかというと
権威的なものが強く、政治、経済、学界、
芸術界など、現役生活で、それなりの
業績を挙げた人物に対して称号を与えている。
それでは風流味があるようで、実はあまりない。

日本の場合は自分で生きようと決めた瞬間から、
風流に生きられる。江戸のご隠居様ではないが、
『もう十分仕事に生きた。これからは好きなだけ
やって生きよう』と実践すればできる。」

そして、日下さんは、65歳以上の人口比率が
あと、5年か10年で20%を超えれば、
シルバーの生き方が社会様式の一つとして公認され、
アメリカでも高齢化が進んでいるので、
「ゴインキョさん」が英語になることも
考えられると結んでいます。

日下さんがこれからは
「健康、社交、信仰、学校、格好に風流が有望」
と述べていることを紹介しました。
「風流」とはどういう意味でしょうか。

日下さんは2004年に、
親しくしていたUCLA大学教授のアメリカ人から
「日本はハイテクの国だと言うが、それは違う。
日本は芸術の国である。例えばトヨタのレクサスは凄い。
あれは工業製品ではなく芸術品である」
と褒められたそうです。

それから、2年たって、新商品が誕生し
それらの意味するところは何かと、
日下さんは次のように述べています。

「たとえばプラズマや液晶の大画面テレビはたんに
“映るテレビ”を越えて、“美しく映るテレビ”である。

日本は美しいコンテンツをたくさん持っているが、
その日本人の心に対応して誕生した新しいテレビである。

そもそもは『美しいものが好きな日本人』のために
つくり始めた。そしてそれが『国際商品』になろうとしている。

日本人はそれを『日本の技術』の勝利だと思っている。
しかし、世界の人は、それだけでなく日本の文化、
芸術、日本の感性に惹かれて買っている。

それは反対の立場から考えればわかる。
私たちがヨーロッパからブランド品を買うときは、
その文化的魅力に惹かれて買っている。
アジアの雑貨を買うときは、そのエキゾチックな
魅力に惹かれて買っている。それと同じである。
…美・創造・仕上げ・可愛さ・出来映え・心づくし ―
など表現はいろいろできるが、
大切なことは日本経済が実現する『質』は、
昔も今も世界の人の予想を超えていることである。

だから、日本は『日本提案型の新商品』ができる。
そもそも『質』という言葉が低いのかもしれない・・・
と私は感じている。

商品一つ一つを見ていると、むしろ『美の経済』という
言葉のほうがふさわしい。

日本経済はこれから『質の創造』や『美の経済』という
分野で世界を引っ張る。

あるいは『風流産業』とネーミングしてもよい。
『これから日本は風流産業で景気が立ち直る』と、
そう思っていると、なるほどという話が次々とみつかる。」

以上、日下さんの「これから日本は風流産業時代で栄える」
という日本経済についての近未来観を紹介しました。

ちなみに、日下さんは2007年に
『あと3年で、世界は江戸になる!』という
大胆なタイトルの本を発刊されています。

前回、未来展望力に日下公人さんが
『5年後こうなる』(2003年に発刊)で
私たちの身の回りで起こっている
新しい動きについて書いたことの一部を
紹介しました。

日下さんは、続いて次のように書いています。
「たとえば盆栽をつくる。
時間は何十年もかかる。
今は別にたいして売れないが、
将来大変な輸出産業になるかもしれない。
売れた瞬間に『生産者』になる。

それまではただの盆栽好きの人。
趣味が産業になるとは、そんなことである。

健康、社交、信仰、学校の語呂合わせで
『四コウが有望』などと書いたこともあるが、
いずれも有望な新産業候補である。
格好を加えて『五コウ』にしてもよい。

それから成功しそうで成功しないシルバー産業だが、
それも五年後には成功例が
かなりたくさん出ていることだろう。

自分の生涯を書きたいシルバーが増えているから、
それを手伝う会社をつくれば良い。
社名は日本伝記(株)ではどうか」

また、日下さんは2006年に発刊した
『数年後に起きていること』と題する本の中で、
「風流経済時代」が到来すると書いています。

日下さんは昭和53年(1975年)に
『新・文化産業論』という本を出して、
一躍デビューし、今は日本を代表する経済評論家として
大活躍さrていますが、「あの頃は日本全体が
若者だったので、『文化産業』という言葉をつかったが、
それがだんだん中年になり、これからはシルバーに
なっていくので、『シルバー文化産業』といってもよいが
『風流』というキーワードの方が似合っている」
と述べています。

この『風流』ということについては次回紹介しますが、
日下さんは、ニュービジネスのヒントは
「健康、社交、信仰、学校、格好の5コーに加えて
風流がある」と評されています。

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