2008年12月

今年はとても楽しい一年でした。
定例の中国株やベトナム株の勉強会で、
楽しい論議を楽しみましたし、
不動産見て歩きでは、これまでは
私が保有している投資用のマンションを
案内するばかりでしたが、この見学を通して、
私の経験、ノウハウを吸収した友人たちが
投資向きのマンションを購入するようになり、
それらのマンションも見て歩きました。

また一年の前半期は6ヶ月かけて
『自分の王国づくりセミナー』を、後半の6ヶ月は
『斎藤孝さんに学ぶ仕事力向上セミナー』を開き、
友人たちと一緒に「人を指導する」ことについて
実際的で役に立つ要領を勉強することができました。

斎藤孝さんからは学ぶことがきわめて多く、
セミナーは12月末で終える予定でしたが、
勉強期間を来年一月までを延長することになりました。

こうした勉強の合間をぬって、
5月には東大5月祭を訪れ、ドクター中松こと、
中松義郎博士の謦咳にふれることができ、
中松さんの本を読み、ご本人の勉強会にも
出席させていただきました。

また7月の暑いさなかでしたが、
台湾の台北と台南を旅行しました。
台湾は昔、日本が統治していたため、
日本時代の名残がたくさんあります。

また台湾のこの二つの街には
邱永漢さんゆかりの場所がたくさんあり、
できればまた訪ねたいと考えています。

滞在したのはたった3日ほどでしたが、
思わぬ体験の連続でしたので、それらの
体験の記述は2ヶ月ほど続きました。

加えて、11月には、邱永漢先生の
ハイQ連載本として20冊目の
『中国にこれだけのビジネスチャンス』
の解説を担当させていただきました。

邱永漢思想研究をライフワークとしている
私にとりまして、またとない貴重な経験で、
友人の皆様には、この本をご購入いただくよう
お願い申し上げました。

この私のお願いに応じてくださった方々に
この場を借りて深く、お礼申し上げます。

さらに12月には戸田ゼミに参加いただいた
方々にお集まりいただき、2009年をしめくくる
ための勉強会と昼食会を開催させていただきました。
絶えざる向上心、向学心を燃やし続けることを
目標とする戸田ゼミにふさわしいイベントで
あったと感謝しています。

この一年、このほか東京駅周辺の見て歩き、
お台場散策などもあり、楽しい一年でした。
これらはすべて、多くの方々のご支援、ご協力の
おかげです。改めてお礼申し上げます。

そして、皆様がよいお年をお迎えになることを
心から祈願申し上げます。

今回、邱永漢さんの「ハイハイQさんQさんデス」
の20冊目の連載本『中国にこれだけのビジネスチャンス』
を解説させていただいた私が、邱永漢さんのどういうところに
興味を持っているかの一端を紹介させていただきました。

邱さんの昭和30年年代の作品の中には
日本の文化を批評した文明批判の書、『サムライ日本』や
中国の春秋戦国時代に現れた孔子、荘子、韓非子など
諸子百家の代表選手を現在人の感覚に即した形で
紹介した『東洋の思想家たち』いった作品もあります。

そうした作品も含めて考えると
邱さんは思想家、それも、私の見るところ、
現代アジアが生んだ最高の思想家だという
印象を持っています。

ですので、私は邱さんのエッセンス本を
始めてまとめさせていただいた時から
自分は邱永漢思想の研究家だ言い、
いまもそう思っています。

邱さんは難しいことを、大層わかりやすい言葉で
書かれますので、「邱さんが思想家?」と
首を傾げる人もおられるかもしれませんが、
邱さんのことを社会思想家だと見ている
方もおられるようで、その方が邱さんの
事業観について聞いた質問に対し、
邱さんは次のように回答されています。

「私を社会思想家として
評価してくれる人はあまりありませんけど、
私自身は自分のことを思想家と思っております。
物の考え方、どういう角度から世の中を見るかというのは、
私の普段から心がけていることで、
その応用の一つが、それをお金に変えることです。
ですから私は社会思想のデパートだと思っていますけど、
金銭関係のケースだけよく売れている、
とお考えいただいたらわかりやすいと思います。
普通の事業家だったら、
会社をどうやって大きくして
大きなお金にするかを考えますが、
私の場合は、自分の考え方を事業化した場合
それが正しかったかどうかということに
興味があるだけなので、
実際にそう大金持ちでもないし、
またお金を目的として
世の中を生きているわけでもありません。
お金儲けは同じことの繰り返えしですけど、
すぐに飽きて一回一回違うことをやりますので、
スリルがある代わりに、しょっちゅう失敗もしております。
その部分が社会思想家のテストということでしょうか。」

この記述は私の邱さんに対する見方に
符合しているように感じ、自分の脳裏に
刻んでる”邱語録”の一つです。

「アダム・スミスという名前は、
少し物知りの人なら誰でも知っている。
1776年3月、スミスが53歳の時に
ロンドンで出版した『国富論』という本のおかげで
今日、私たちが経済学と読んでいる学問の元祖になっている。

しかし、アダム・スミスの名前は知っていても、
『国富論』を通読した人がはたしてどれだけいるだろうか。
経済学で飯を食っている人の中でも、
全巻通読した人がはたして何人いるだろうか。

また仮に『国富論』が古典経済学の代表作であることは
知っていても、それが出版されたばかりの頃は
イングランドやスコットランドでは
あまり話題にならず、どちらかといえば、
過激思想視されたことを知っている人が
はたして何人いるだろうか。

ましてアダム・スミスが一生を独身で貫き、
死んだ時はほとんど財産らしい財産を
遺さなかったことについては知っている人は
少ないであろう。」

上に紹介したのは邱永漢さんの
『邱永漢「国富論」現代の読み方』の
最初の部分です。
私は大学で経済学部に通いましたが、
スミスの『国富論』は読んでいません。

アダム・スミスは『国富論』を書いたことで、
経済学の始祖であると言われていますが、
経済学部に通いながら、その国富論を
読んでいないというのは私のなかで
一つのコンプレックスになっていました。

しかし、邱さんがその解説書を
書いてくださったことで、私はスミスの
国富論を読み通すことができました。

おかげで、私のコンプレックスは解消しました。

200年前にイギリスでアダム・スミスが『国富論』を書き、
100年前のイギリスで100年前にカール・マルクスが
『資本論』を書きましたが、それから100年後に日本で、
邱永漢さんが『付加価値論』を執筆しました。

この『付加価値論』の執筆に先立ち、邱さんは、
アダム・スミスの「国富論」の解説文を
『ネキスト』(講談社)に連載し、昭和63年2月、
連載完結により、『邱永漢『国富論』現代の読み方』
を刊行しました。

この本のまえがきで邱さんは次のように書いています。
「『国富論』のなかでスミスが『分業論』と
『神の見えざる手』について言及していることは
広く人口に膾炙(かいしゃ)している。
『分業論』と『自由放任』によって
経済の発展が著しく促進されたことは疑いの余地もないし、
それを最初に指摘した点でスミスの功績は明らかだが、
独創性という点では、『むしろスミス以前の人々が、
金銀を富と教えていたのに対し、その国々の生産物こそ
富であり、すべての価値は労働から生み出されたものであること』
を証明してくれた面のほうが際立っているであろう。

私は経済学の発想が今日のような形になるまでの過程を
遡って知りたいという欲求に駆られて、
スミスの勉強をする気を起こしたのだが、
『国富論』を通読してみて、今日、現に起こっている
経済界の頭の痛いことは、今になって生じたものではなくて、
人間の歴史と共に長いものだな、と改めて痛感した。

貿易摩擦とか、売上税とか、国家財政の大赤字は
二百年前のヨーロッパにすでにあった現象であり、
今日の日本で起こっている財テク論議のなど、
スミスの本を読むと、200年前のオランダで
かしましかったことがわかる。
スミスは親しい観察家であり、経済原則に対する意見は、
時代と所を異にしても、傾聴に値するものを持っている。」

そして、邱さんは『国富論』の全貌を知りたい人は
邱さんの恩師である故大河内一男先生の
中公文庫版を読むことを薦めておられます。

かつて富とか財宝とか言えば
金銀・宝石の類だと考えられていました。
たとえば、南アメリカ大陸を発見した
ポルトガル人やスペイン人は
「ここには金が出るか。銀があるか」
と言って貴重な金属を探し回ったと言われています。

このような、富を金銀・財宝の類と
見る考えに対して、200年前イギリスで
活躍したアダムスミスは
「あらゆる富の源泉は労働力である」
と述べました。
その例示としてアダムスミスが
『金銀で葡萄酒が買えるなら、
葡萄酒をつくる人は葡萄酒で金銀を買えるじゃないか』
と言ったことを邱さんは「付加価値論 Part1」
のまえがきで、紹介しています。

また、100年前にロンドンで活動した
カール・マルクスは
「富の源泉は労働力である」
と言うスミスの考え方を踏まえながら、
分配に対する働く者の要求を代表する
考えを発表しました。

その100年後に日本で
資本も日本人が資源もない日本人が
繁栄する過程を見た邱さんは
「日本人のつくりだした富も、
基本的には労働力の所産であり、
その点では私も『富は労働のつくり出すもの』
というスミスやマルクスの見解に異存を
唱えるものではない。

しかし、日本人の成功は労働力を
『付加価値の創造』に集中させた結果であり、
それは主として工業化によって
もたらされたものであるから、
『工業化に成功した者が金持ちになる』
という新しい法則が誕生することになった」
(邱永漢『付加価値論 Part1』 まえがき)
と述べています。

『工業化に成功した者が金持ちになる』
こと日本に学んだのが台湾、韓国で
いま、その道を走っているのが
躍進目覚しい中国ですね。

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