2006年07月

私がイメージしている邱永漢さんは
骨格が出来上がった一流企業には関心を持たず、
これから成長することが見込まれる小さな会社に
格別の興味を示されます。

実際、これまでも中国株の中で、
この株は今後伸びそうだと思われる株に
目を注いでこられました。

例えば2001年ことですが
「成長株が売り叩かれた時がチャンス(第490回)」
と言って、株価が極端に下がった「方正香港」に
目を向けられました。

2002年には
「高速道路株がこの次の成長株です(第805回)」
とこの時点ではまだ道路を利用する車は
それほど多くはなかったのですが、
道路ができあがってきたので、
これから走る車が増えるに従い、
高速道の利益は確実に上がってくると
高速道路株に目を向けられました。

また2004年には
「製紙メーカーは中国では成長株です(第1469回)」と
中国では電気製品がたくさん買われるので、
それらを梱包する段ボール箱が増えてくると、
紙をつくる会社を推奨され、私など
その豊かな推理力に感心させられました。

同じく2006年には
「損害保険と生命保険が成長株の柱に(第1754回)」と
これから中国人の所得が増え、
命の値打ちが高まるので
共産主義時代の中国には存在しなかった
「損害保険」とか「生命保険」が
これから重要視されるようになるともおっしゃいました。

これらの予想の中には「香港方正」のように
途中で見方を変えられたものもありますが、
多くは邱さんの予測が的中しています。

このように、邱さんはこれまでも
これから成長する会社に関心を払って
こられたのに、最近、
「一流株から成長株に選手交替します」とか
「成長株中心の株価に変わりそうです」
とことさら「成長株」のことを
おっしゃるのはなぜだろうかと
私は不思議に思い続けてきました。

このようなご意見は
邱さんが都市ガスとか、
廃棄物、汚水処理の専業メーカーとかの
会社の存在に出会う中で
主張されるようになってきました。

考えれば、中国ではいまだ成長株が
続々と排出されているという状態にはなく
そう言える様になるのは、これからなのだ
という認識が邱さんの頭のなかで
深まってこられたからかなと
想像しています。

いま「ハイハイQさんQさんデス」で、
邱永漢さんが連日のように、
これから、中国株がどうなるかについての
見通しをお書きになっています。

そして、その見通しのなかで、
日本の株がどう変化してきたかの
越し方が参考にされています。

そうした日本の歩いてきた道を
確かめてみることが、邱さんのお説の理解を
深めることになるのではないかと考え、
ここ数回、邱さんご自身が以前お書きになった
文章を教材として、日本の株が
利回り中心で動いてきた時代から
利回りを越えて高く評価される時代に
移り変わってきた経緯を見てきました。

そして、邱さんが
「株価の高低を判断する基準は
一株あたりの利益がもっと上昇するのかどうか、
あるいはその企業として
もっと多くのお金を集められる位置にあるか
という考えを採用されてきたことを見てきました。

そのうえで、

「第2323回 成長株中心の株価に変わりそうです」

で披露されていることをもう一度確かめましょう。

1)「中国は、実利を追う社会なので
日本株が利回りを越えて高く評価されるようになった
道をそのまま追うことにならないだろうけど、
これから中国で所得が高くなり、
株に向かう資金が向かうお金が増えるようになるので、
株価が更に高くなり、利回りが低くなることは
避けられないでしょう。」

2)「株価を押し上げる原動力は
一株当りの利益率が高水準を維持することだから
これから株価を追求する基準は
企業スケールの大小に関係なく
どんな企業が一番高い利益をあげられるかを物差しにし、
有望株かどうかを決めることになるでしょう」

邱さんの所説はこのように要約されると思いますが
こうした考えたに立ち「中国株は成長株中心になる」
とおっしゃるようになったのは、中国株について
探求を進められるなか、都市ガスとか、
廃棄物、汚水処理の専業メーカーとかに
出会われことが大きな引き金になっているようです。

これからは邱さんの後を追って、
これらの会社について自分なりに
調べてみることにしたいと思います。

前回、邱永漢さんの20年前の著作
『籠いっぱいの価値ある情報』のなかで
日本でPER(レシオ)が取り上げられた頃の
光景を伝えてくれる文章を
引用させていただきました。

この本で邱さんはファナックと清水建設を例にとって
「一株当りの利益」、「株価」、「レシオ」の
関係を説明し、投資の実際の場では、
実は「レシオ」も役に立たず
役に立つのは「一株あたりの利益」であると
次のように書いておられます。

「株価収益率を根拠にして株価が安いか、
高いかを判断するのは、
今日ではもはや常識に属する。

それはまた日本のように、
いくら利益をあげても会社が配当をケチる
日本の株式市場の株価を
判断する恰好の物差しになっている。

『四季報』でも『会社情報』でも最近は
PER(レシオ)を載せるようになった。
(中略)
例えばファナックは59年に
一株あたりの利益232円ほどの利益をあげている。
株価が高く買い上げられるのは当然として、
17,000円の高値をつけている。
レシオは56倍になる。

また清水建設は59年、
一株あたり19円70銭の利益をあげている。
株価は230円だから、
レシオはわずかに11.6倍に過ぎない。
(中略)

(ふつう)年に8円くらい稼いで株価が160円とすれば
レシオは20倍になる。

すると、(レシオが)一番低いのは清水建設で、
一番高いのはファナックだから、ファナックは
異常な高値まで買い上げられており、
高すぎるのではないかと考える人もいる。

反対に清水はうんと安いし、しかも年に9円の
安定配当をしているから、利回りを計算しても
4%近くにまわる。

ならば、清水を買えばいいのではないかと考える。
少なくとも利回り本位の人やレシオの信奉者は
そう考えがちである。

ところが、利回りはもう全く問題にならないとしても、
レシオも実はあまり参考にならない。

参考になったのは、
一株あたり現にどのくらいの利益をあげているのか、
またこの利益は来年度はどうなるのか
3年後はどうなるのかといった未来の見通しであって、
もし先行きに対して強気の見通しが立つなら、
レシオを無視して株価はさらに上まで買い上げられる。

今や株価の高低を判断する基準はレシオでもなければ、
まして利回りでもないことがわかる。

それでもなお株価の上昇が期待されているのは
一株あたりの利益がもっと上昇するのかどうか、
その企業としてもっと多くのお金を集められる位置に
あるかどうかという一点に集中している。

日本の人気銘柄にはそうした期待が寄せられているか、
このことは配当率がふえるかどうかということとは
全然関係がない。

これからももっと利益をあげて
日本中、世界のお金を集めることができれば、
その企業の含み資産は
いよいよふくれあがる。その斜影が株価であるから、
斜影が大きくなれば株価も自然にあがる
仕掛けになっているのである。」
(『籠いっぱいの価値ある情報』昭和60年)

昨今、邱さんが今後の中国株の動きを
予測するに当たって力説されていることの
理解を深めるのに参考になると考え、
少し長いですが、引用させていただきました。

前回、昭和60年に出版された
邱永漢さんの『籠いっぱいの価値ある情報』で
日本の株が利回りをはずれてドンドン買い上げられ、
それを支えたのが,一株当たりの利益が
上がっていきそうだという期待であったと
説明を受けました。

今回はそれに続く箇所を
引用させていただきます。
「私がはじめて株に手を染めた35年ごろ、
株を買う人はいずれも利回りを根拠にして
株の売買をしていた。
銀行金利が6%として、株の配当率は
定期の金利よりも不安定なものだから、
6%より高いのが常識であった。

不安定な利回りを狙うのだから、
せめて一流企業の株を狙えとばかりに、
一流銘柄にだけ人気が集中していた。

それに対して、私は
企業の成長性を加味すべきだし、
どうせ買うなら毎年、増資を繰り返すような
成長企業の会社の株を買い、
株数を増やしていく方が
理にかなっていると主張した。

投資家たちが私の主張に耳を貸してくれたので、
日本の株式市場は一時期、
成長株の株価が額面の10倍にも20倍にもあがり、
反対に一流企業の株価は限りなく額面に近づくという
傾向を見せた。

この時期に、成長株の買い根拠になったのは、
増資をしても配当率が落ちないということであり、
配当率が落ちないためには、
一株あたりの収益率の高いことが重要であった。

俗にレシオと呼ばれている株価収益率は
配当率を離れて株価が高くなっていく傾向を説明するために
アメリカの証券アナリストたちが考え出した理屈である。

一株当たりの収益率が高くなれば
同じ配当率の他の銘柄に比べても当然
高く買われて不思議ではない。

たとえば、一株が50円稼ぐ株が
千円の株価をつければ
レシオは20倍になる。
2千円をつければ、40倍になる。
レシオが低ければ、
株価は高い位置にいても
値段は安いと言えるし、
株価の位置は低くても、
レシオが高ければ、
株価は安いことにはならない。」
(『籠いっぱいの価値ある情報』昭和60年)

ここで取り上げられてる「レシオ」については

「第341回 欧米人の投資の物差しは利益収益率」
ででもとりあげました。

ちなみに、邱さんがこれまでお書きになった
株についての評論を掲載する本は
70冊くらいありますが、
私が記憶するところによれば、
「レシオ」についての記述が最初に登場する本は
最近とりあげている『籠いっぱいの価値ある情報』です。

昭和60年に出版された
邱永漢さんの著作に
『籠いっぱいの価値ある情報』
という本があります。

今から20数年前に書かれた本ですが、
この本の中で邱さんは
日本の株が利回りをはずして
高く買い上げられる傾向について
次のようにお書きになっています。

「日本の上場企業の平均利回りは
たったの1%である。100万円投じて、
1年間にもらえる配当金は
たったの1万円である。
(中略)
アメリカの株は、
日本にくらべると、ずっと利回りが高い。
年に7%から8%の利回りがある。
私の友人の中にも、
アメリカ、日本、台湾を行き来していて、
三国にわたって株を買っている人がいる、
その人は私と株の話をするたびに、
アメリカの株に比べて日本の株が高すぎると
文句を言う。

アメリカの超一流株は、
日本の会社に比べてみても
基礎がしっかりしtているが、
利回り的にもちゃんと採算に乗っている。
どう考えても、日本の株は
ワリに合わないという。

ところがワリに合わない日本の株が
さらに高値に買い上げられる。
アメリカ人までが一緒になって
日本の株を買う。

ただでさえ利回りをはずしている株が
さらに利回りをはずしていく。

その買いの根拠はどこにあるか
というと値上がり率であり、
キャピタル・ゲインである。

どうして値上がりするかというと、
一株当りの稼ぎが
さらに上昇していく気配を
見せているからである。」
(『籠いっぱいの価値ある情報』昭和60年)

昭和60年頃、日本の株が
ドンドン値を上げていきましたが、
それを支えたのは、一株当たり利益が
更に上がっていきそうだという
気配であったと説明されています。

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