2006年04月

昨日から大型連休が始まりました。
もともとは、この連休の間は
シンセンと香港に旅するつもりでしたが
シンセンで活動している友人から
この時期は中国でも休みの関係で
シンセンあたりは大変な人出になり、
この時期は避けたほうがいいといわれ、
やむなく旅行を断念し、日本国内で
連休を過ごすことになりました。

旅行する代わりに、楽しく休日を過ごす方法は
いくつかあります。
読みたい本を読んだりしたり、
好きな音楽を聴いたり、
原稿を書いたりすることもあります。
あるいはいま話題になっている
施設や場所を訪れる方法もあります。

でも、私にとって一番楽しいのは、
向上心に燃える人たちと一緒に勉強することです。
勉強への意欲を持っている人と一緒になり、
こういうことが勉強したいのだという意向を受けると
自分にどういうサービスができるだろうかと、
あれこれ考え、こちらの脳細胞が活発に働いて
あっという間に時間が過ぎてしまいます。

そう思って、この連休中、飛び石で
各自の人生方向や目標、計画を考える人生設計セミナーとか、
中国株について勉強する会とか、あるいはまた
邱永漢さんの20代、30代の頃の足跡を訪ねることを
企画し、参加者を募りました。

ありがたいことに、私の呼びかけに
応じてくださる方がいて、勉強会を
開くことができ、昨日は
人生設計セミナーを開きました。

このセミナーは、これまでかなりの数
行ってきましたが、毎回参加される人が異なり
話題になることもまちましです。
おかげで、私の頭や口も活発に動いて
やっぱり、あっという間に時がたちました。
私にとってはやっぱり勉強は
時間のたつのを忘れる妙薬の1つです。

自分の人生を開花させるには
どうしたらいいかは、いつも人が考えている
最重要の事柄です。

この点につき、糸川英夫さんは
自分が尊敬する人の本を読むこと、
そして、読んだ著者に会いに出かけることであると
おっしゃっています。

「人生の扉を開くカギを持った人は必ずいると思う。
そのカギを持った人と出会うことが
決定的に重要である。
では、どうすれば、そういう人に
出会うことができるのだろうか?
結論を先に言えば、自分の尊敬する人物に
徹底的にあこがれることだ。
まるで片想いのように
何がなんでも心の底から敬愛することだ。
(中略)
ノーベル賞を受賞した人たちの経歴をみていると、
生の人間との、火花かが散るような出会いが何度かある。
そして大事なことは、だれも相手の人物が
呼びにきてくれるのを待ってはいないということだ。

みんな、自分のほうからあこがれて出かけていっている。
わざわざ、『人生のカギをください』といわなくったって、
時がくれば必ず、カギは自分の手に入る。

本を読む場合でも、人間に出会う場合でも
自分のカギをにぎっているのは、たったひとりの
人間である。その人をどうやって選ぶかということが、
常に問題であろう。
再び繰り返すが、それは、本能的といってよいほどの、
『あこがれ』であると私は断言してはばからない。」
(糸川英夫著「驚異の時間活用術」)

実際に自分の人生を大きく開花させた
方の発言は力強くまた具体的ですね。

糸川さんのアドバイス自分の生活に
取り入れるとしたら、自分に
二つの質問をすればいいのですね。

1つは、「自分があこがれている方は
どういう人か」という質問。
もう1つは「その人に出会うには
どうしたらいいのか」という質問。

この二つの質問を自分に投げかけ、
自分なりの回答を考え出して、実行したら
”賢者の知恵”を活用したことになります。

糸川英夫さんは著書『驚異の時間活用術』のなかで
優れた人の伝記などの本を読むことを薦めています。
そして、同時に、本の著者と直接会うことも薦めています。

「一冊の書物に出会ったことにより、
生涯の目標が決定される場合もある。
しかし、できることならば、そのうえさらに、
その書物の著者と直接会うほうがよい。
きっと文字からだけでは得られなかった、
計り知れない影響を、さまざまな形で
受け取ることができるに違いない。」
(『驚異の時間活用術』)

糸川さんがこのようにおっしゃる背景には
大学生の頃、素晴らしい先生と出会い
その先生との交流によって、自分の人生が
開いていったという体験があります。

糸川さんの記述によれば、糸川さんは
東大工学部航空学科の学生であった頃
心の底からあこがれてしまうような
素晴らしい先生と出会いました。

糸川さんは、航空学科を卒業して、
中島飛行機株式会社に入社し、
「隼」「鐘旭」などの戦闘機の設計に従事します。

そうした仕事に励むなかで、大学時代
あこがれていた先生の論文に
いつも目を通しました。

また糸川さんがお書きになった論文が
先生の目にとまり、先生との共著で
論文を発表することにもなります。

そして、結局、その先生のヒキで
糸川さんは東大の助教授に迎えられるのです。

糸川さんは戦後、医学や音響学を研究し、
またペンシルロケットを開発に力をつくします。
その後、東大やシカゴ大学の教授をしたあと、
組織工学研究所を設立するほか、
バレエを演じたり、チェロを演奏したり
ベスト・セラー作品『逆転の発想』
を執筆されます。
また高級なバイオリンも製作されました。

このように糸川さんの活動は多方面にわたり
好きなことに打ち込んで、人生を楽しまれましたが
そのキッカケは大学時代に素晴らしい先生に
出会ったことであったと、述懐されています。

そうした実際体験を背景に、糸川さんは
「出会いは人生を大きく変えるもので
自分があこがれるような人と出会うことが
決定的に重要である」とおっしゃっています。

前回からの続きになりますが糸川英夫さんは
著作『驚異の時間活用術』の中で
小谷正一さんの「人生の棋譜は残しておくべき」
という意見を受け、次のように応じておられます。

「伝記は1人の人間の“棋譜”である。
ちょうど碁や将棋の対局の手順を
図面として残しておくように、
人類のために偉大な業績を遂げた人の人生の歩みを、
できるだけ正確に残しておくということは
後世の人にとっては、非常に大きな参考となり、
またそれだけ、あとに続く人にとっては時間の節約になる」
(糸川英夫『驚異の時間活用術』)

そして、糸川さんは
世界全体に大きな影響を及ぼしている
ようなものを発見した人の人生は、
ぜひ勉強した方がいいと考え
「半導体の研究およびトランジスタ効果の発見」で
ノーベル賞を受けたショックレーについて調べ、
「彼が20代の前半に、自分の目標を決めていることが
わかった」と書き、ノーベル賞を受賞した人たちの
共通点にふれています。

「ノーベル賞の受賞者たちは、
自分の目標を達成していく上で、
どのような方法をとったであろうか。
私が調べたところでは、共通点が
だいたいにおいて2つある。

1つは、自分が設定したテーマと
関係のあるようなことを研究している人たちに、
積極的に会いに行っていることである。
つまり、フェイス・ツウ・フェイスによって
さまざまな情報を受け取っているということだ。

もう1つは、論文や書物は
必ず読んでいるということである。
その上、手紙による情報の交換も行っている。
ということは、すなわち、文書・文字によって
情報を得ているということにほかならない。

文字と人間-この二つが、大発見・大発明にいたる
プロセスを決定づけている」(同上)

そして、糸川さんは
「これから次の時代をになおうとする子どもたちに、
創造的な人間になってほしいと思ったら、
なるべくテレビやマンガを見せない方がおおのではないか」
とアドバイスされています。

糸川英夫さんの『驚異の時間活用術』という本
を開くと小谷正一(こたにしょういち)さんという
方の発言も紹介されています。

小谷正一さんと言ってもご存知の方は
ほとんどおられないと思いますが、
糸川さんと同じように、生前は
邱永漢さんと親交があった方で
邱さんの文章にもときどき登場されます。

この小谷さんが「伝記」の重要性について
述べておられたことを、糸川さんは次の
ような形で伝えておられます。

「私の友人に小谷正一さんという、
たいへん尊敬している方がいる。
もと電通にいた方であるが、
いつかわたしどもの組織工学研究所の話し合いに
きていただいたとき、小谷さんは
『世の中で非常に話題になったような事がらの
“棋譜”は必ず残しておくべきだ』とおっしゃっていた。
わたしも全く同感だ。

たとえば、出版でいえば、これまで、
誰もが予想もしないような売れ行きを示したものに、
塩月弥生子さんの『冠婚葬祭入門』がある。
この本は、せいぜい売れても2千部がいいところと
いわれていたという。ところがふたを開けてみると、
なんと通算4百万部売れた。

いま圧倒的な人気を呼んでいる『ドラえもん』は
4千万部である。
このようにケタ違いに売れたものは、
その“棋譜”を残しておくべきであろう。

つまり、社内でプランを立てたとき、
いいだした人は誰か、
またそのプランについて誰と誰が反対したか、
反対の根拠は何であったか。
さらに、かなりの反対があったにもかかわらず、
それがプランとして採用された
その理由が何であったのか。
そして実際に発売されて、
人気を読んだ原因はどこにあったのか。
そういうことを、記録として残すべきだというのが
小谷さんの意見であり、私もその通りだと思う。」
(糸川英夫『驚異の時間活用術』)

この文章が書かれたのは昭和56年のことですが
ここで小谷さんがおっしゃっている“棋譜”とは
「伝記」のことで、小谷さんが「伝記」の果たす
重要性を述べておられたことがわかります。

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