私がイメージしている邱永漢さんは
骨格が出来上がった一流企業には関心を持たず、
これから成長することが見込まれる小さな会社に
格別の興味を示されます。

実際、これまでも中国株の中で、
この株は今後伸びそうだと思われる株に
目を注いでこられました。

例えば2001年ことですが
「成長株が売り叩かれた時がチャンス(第490回)」
と言って、株価が極端に下がった「方正香港」に
目を向けられました。

2002年には
「高速道路株がこの次の成長株です(第805回)」
とこの時点ではまだ道路を利用する車は
それほど多くはなかったのですが、
道路ができあがってきたので、
これから走る車が増えるに従い、
高速道の利益は確実に上がってくると
高速道路株に目を向けられました。

また2004年には
「製紙メーカーは中国では成長株です(第1469回)」と
中国では電気製品がたくさん買われるので、
それらを梱包する段ボール箱が増えてくると、
紙をつくる会社を推奨され、私など
その豊かな推理力に感心させられました。

同じく2006年には
「損害保険と生命保険が成長株の柱に(第1754回)」と
これから中国人の所得が増え、
命の値打ちが高まるので
共産主義時代の中国には存在しなかった
「損害保険」とか「生命保険」が
これから重要視されるようになるともおっしゃいました。

これらの予想の中には「香港方正」のように
途中で見方を変えられたものもありますが、
多くは邱さんの予測が的中しています。

このように、邱さんはこれまでも
これから成長する会社に関心を払って
こられたのに、最近、
「一流株から成長株に選手交替します」とか
「成長株中心の株価に変わりそうです」
とことさら「成長株」のことを
おっしゃるのはなぜだろうかと
私は不思議に思い続けてきました。

このようなご意見は
邱さんが都市ガスとか、
廃棄物、汚水処理の専業メーカーとかの
会社の存在に出会う中で
主張されるようになってきました。

考えれば、中国ではいまだ成長株が
続々と排出されているという状態にはなく
そう言える様になるのは、これからなのだ
という認識が邱さんの頭のなかで
深まってこられたからかなと
想像しています。