中国において工業化が大きく進展したため
輸出が増え、中国の貿易収支は黒字基調が
定着することになりました。
反面、中国の貿易の相手国になっているところでは
対中貿易が赤字になり、特に米国は
対中貿易が大幅な赤字になっています。
このため米国が先頭に立って、対中貿易の赤字は
元が割安に据え置かれているためだと
中国の通貨政策を批判し元の為替レートをひき上げを
迫ってきました。

また中国においては、貿易で外貨を稼いだ人たちが
中央銀行である「人民銀行」に稼いだ外貨を運び、
人民元に換えますので、「人民銀行」は
大量に人民元を発行することになり、
中国国内では元がたくさん出回ることになり、
過剰流動性が生じる危険をはらむようになっています。

こうした事情を考慮して、中国は本年7月21日
人民元の2%の切り上げ、また1日最大0.3%の幅で
変動相場制に移行させることを発表しました。
この措置に対して、米国などは切り上げの幅が小さく、
より大幅な元の切り上げが必要であると主張し、
今後元は、小刻みに切り上げられることが
予想されます。

さて、成長期にあった日本がドルに対して
1ドル356円で固定させていた円を
相場変動制に移行したのは昭和46年のことです。
当時日本は成長期にあり、今の中国と同じように
輸出を活発に行い、米国は対日貿易赤字になり、
その原因は円が割安に据え置かれていることだと指摘し、
それらの批判を受けて、相場制に移行させました。

当時、日本で輸出にかかわる仕事をしていた人は
円高により、輸出が難しくなり、また手に入る円も減ると
危機感を持ち、合理化とコストダウンに取り組みました。

そうした試練を経て、日本の企業は競争力を飛躍的に
高めることになりましたから、いまの中国においても、
輸出産業に従事している人たちは元の切り上げに
危機感を持ち、合理化とコストダウンに取り組み、
また会社の競争力が高めるることに努力を傾けて
い行くことが容易に想像されます。

ですから、元が切り上げられるから
輸出産業が不利ということにはならないと思います。
輸出産業に従事する人たが、
今後どのようにして自分たちの競争力を高めていくかに
を向けていきたいと思っています。