邱永漢さんが昭和47年に、
台湾で事業を起こそうと考えたとき、
未来を予測する物差しにした二つは、
先進国で展開されている事例を参考に
することでした。

邱さんは次のように書いています。
「海を渡る船を見ても、先を進んでいる船と、
あとから進んでいる船がある。
マラソンで走っていても、
自分より前を走っているひともあれば、
ずっとうしろからついてくる人もある。
それと同じように、国にも先進国と後進国があり、
後進国というと差別しているようにきこえるので、
少し遠慮して『発展途上国』と読んだりしている。(中略)
いわゆる先進国のやていることが何でも
正しいわけではないが、発展途上国は先進国の
やっていることを模倣することが多い。
だから先進国で起こったことは、かなり高い
確率で発展途上国の指標になる。」

と言って戦後日本が、自動車の生産から、
スーパーマーケットの全国展開、さらに
マグドナルド、ケンタッキー・フライド・チキンなど
セントラル・キッチンのあるレストランの展開まで
アメリカをお手本にして模倣してきた経緯を
ふりかえり次のように述べています。

「生産から流通,はてはサービスにいたるまで
日本の産業界がこれだけ短い期間に
これだけ急速に発展できたのは、
主としてアメリカという先行指標があったからである。
そうした先行指標がある限り、未
来を予測することはそんなに難しくない。
お手本をそばにおいてそれをなぞらえれば、
そう見当違いにならないですむものである。」
(『アジアで一旗』)