私が、邱永漢さんが株についてお書きになった作品を
集中的に読んだのは今から10数年前のことになります。
その時集めた本は20数冊ありました。
それぞれの作品の特徴があり、
読み続けることは面白いことでした。

その時読んだ一冊に『株は魔術師』という本があります。
昭和62年から平成元年2月までの間、
『月間ドリブ』に連載した文章が
まとめられたものですが、
このまえがきに次のように書かれていました。

「株の動きを自分なりに予想して、
言うことをきかせることは容易ではない。
過ぎ去ったあとを見て、
『やっぱり俺の言うとおりになっただろう』
というのは簡単だが、
『ではこれからどうなる』ときかれたら
途端にしどろもどろになってしまう。

俗に『ネコキン』というように
『猫のキンタマ』は通りすぎたあとには見えるが、
前からは見えないものなのである。

株式市場にはまさにこれと似たところがあるが、
株をやる人としては、何とかしてその見えないところを
察知する必要がある。

魔術師の仕掛けを見破ることができれば
勝ったも同然なのである。
しかし、残念ながら仕掛けは複雑で、
かつ次々と変わっていく。
とても我々の推理力ではなかなか見破れない。

百勝百敗は無理だけど
9勝6敗ていどの結果を得られる作戦のヒントは
いくらか考えられる。
それについて、初心の者にもわかるように
叙述したのが本書である。」

いま思い浮かぶことは、
邱さんそれぞれに状況に即しながら
どうしたら株で儲けられるのかの原理、原則を、
考えそして書き続けておられる人だということです。