今回、邱永漢さんの「ハイハイQさんQさんデス」
の20冊目の連載本『中国にこれだけのビジネスチャンス』
を解説させていただいた私が、邱永漢さんのどういうところに
興味を持っているかの一端を紹介させていただきました。

邱さんの昭和30年年代の作品の中には
日本の文化を批評した文明批判の書、『サムライ日本』や
中国の春秋戦国時代に現れた孔子、荘子、韓非子など
諸子百家の代表選手を現在人の感覚に即した形で
紹介した『東洋の思想家たち』いった作品もあります。

そうした作品も含めて考えると
邱さんは思想家、それも、私の見るところ、
現代アジアが生んだ最高の思想家だという
印象を持っています。

ですので、私は邱さんのエッセンス本を
始めてまとめさせていただいた時から
自分は邱永漢思想の研究家だ言い、
いまもそう思っています。

邱さんは難しいことを、大層わかりやすい言葉で
書かれますので、「邱さんが思想家?」と
首を傾げる人もおられるかもしれませんが、
邱さんのことを社会思想家だと見ている
方もおられるようで、その方が邱さんの
事業観について聞いた質問に対し、
邱さんは次のように回答されています。

「私を社会思想家として
評価してくれる人はあまりありませんけど、
私自身は自分のことを思想家と思っております。
物の考え方、どういう角度から世の中を見るかというのは、
私の普段から心がけていることで、
その応用の一つが、それをお金に変えることです。
ですから私は社会思想のデパートだと思っていますけど、
金銭関係のケースだけよく売れている、
とお考えいただいたらわかりやすいと思います。
普通の事業家だったら、
会社をどうやって大きくして
大きなお金にするかを考えますが、
私の場合は、自分の考え方を事業化した場合
それが正しかったかどうかということに
興味があるだけなので、
実際にそう大金持ちでもないし、
またお金を目的として
世の中を生きているわけでもありません。
お金儲けは同じことの繰り返えしですけど、
すぐに飽きて一回一回違うことをやりますので、
スリルがある代わりに、しょっちゅう失敗もしております。
その部分が社会思想家のテストということでしょうか。」

この記述は私の邱さんに対する見方に
符合しているように感じ、自分の脳裏に
刻んでる”邱語録”の一つです。