糸川英夫さんが平成7年に発刊した著作に
『人生に消しゴムはいらない』
と題する本があります。
昨年の暮、何気なくこの本のページを繰ると、
「人生新設計法『24時間法のススメ』」
という見出しが目に飛び込んできました。

興味を惹かれ、その箇所を読むと、
最初に、今の私たちが当然のことのように
受け入れている一般的な人生設計
(人間の人生を三つに分ける区分)が
紹介されています。

(1)人生の成育期(第一期・20歳から25歳)
 学習の時期(成長期で就学、非社会人)

(2)人生の収穫期(第二期・25歳から65歳)
 勤労の時期(成人し、就職、社会人、家族と社会を支える)

(3)人生の成熟期(第三期・65歳以降)
 リタイアの時期(子育ても終わり、自適の人生を過ごす)

この人生の三区分について糸川さんは
「人生設計として無理がある」と指摘し
次のように述べています。

「ここで一つのたとえをお話しましょう。
昆虫は卵からサナギいなり、やがて
成虫になるとき、ほとんどの昆虫は
各段階で,個体の能力は飛躍するのです。
ちなみにさなぎから成虫になるとき、
ほとんどの昆虫は飛翔能力を獲得します。
これなら昆虫を三分割しても意味をもちます。

しかし、人間は成人したからといって
飛翔的な能力が備わるわけではありません。
人生三分割による昆虫的人生設計では
人間性はなくなってしまうのです。

考えてみれば、人間は、平均寿命が長くなっていて
高齢者の人数も飛躍的に増えています。
定年後に楽隠居して、それまでにできなかった
ライフワークや趣味を楽しめる余裕が
なくなりつつあります。
 
仮にそれが可能としても先に述べた
サンシティのケースのように、
ライフワークや趣味の成果が
誰にも相手にされず、むなしさを味わったり、
孤独に悩まされる結果に終わりかねません。 
悠々自適の理想的な余生は
望むべくもないことになりかねません。 」

文中にあるサンシティとはアメリカの
私的年金を運用する会社が建設した町のことで、
糸川さんはこの町に住む旧知の友人を訪ね、
指摘するような現実に接してたことを書いています。