日下公人さんが『食卓からの経済学』で
ロイズ保険会社が喫茶店から始まったことを伝える
文章の続きを抜粋させていただきます。

「コーヒー・ハウスは危険人物のたまり場と看做されていた。
そういう連中が保険を始めたのだから、
世間の人たちが、『怠け者たちが、額に汗して働かずに、
しかも他人の不幸をタネに金儲けをたくらんでいる』と
見たのも、無理からぬことである。

また彼らが適正な保険料を決定するために知恵を絞り、
それから200年たってみると、善人のやる商売ではないと
言われた保険業の過去を覚えているものは誰もいない。

それどころか、保険会社は立派な仕事と思われている。
保険料率の決定も、昔はバクチや賭けにおける
オッズ(倍率)の一種であったのが、今は
情報処理工学とかの名称で呼ばれる学問の対象となった。

何という変わりようだろう。
ちなみに、かのロイズ社の本社ビルの内部には、
16世紀のロイズ・コーヒー・ハウスと同じものが
一部屋造られており、『わが社のスタートは
この喫茶店からはじまりました。
どうぞコーヒーを飲んでください』と案内される。

ロイズは今ではコンピュータの端末で
外国為替や株を売買するシステムを世界に
売買しているが、それもかのコーヒー・ハウスが
ご先祖だと思うと感無量である。」
(日下公人『食卓からの経済学』)

さて、ロイズ社の社屋は“シルバーカラー”の大きな
建物で、ある著名な建築家が設計したもので、
今のロンドンの建築物を代表する一つに
数えられているようです。

私がそこを訪ねたのは土曜日で、
残念ながら中に入れす、18世紀の
ロイズ・コーヒー・ハウスでコーヒーをいただくことは
できませんでしたが、新しいビジネスが生まれ
それが次第に発展する歴史にふれることができ
私としては満足でした。