日下公人さんが『個性を以って貴しとす』という

著作で書いているロビンソン・クルーソーの

孤島での生活についての記述の続きを

引用をつづけさせていただきます。

「孤島に漂流した彼は、

囲い込み地をつくり(エンクロージャー)、
そこで山羊の飼育や小麦の栽培を行う(計画的拡大再生産)。

また住宅と仕事場の建築工事をし(技術)、

船から持ってきた火薬を湿らぬように方々へ貯蓄する(保険)。

 

さらに午前と午後のスケジュールを決めて労働し(計画的時間配分)、

暦を作って何月何日かを知ろうとした(長期計画)。

 

そして余裕ができると島の中を探検して楽しんだ(レジャーと資源開発)。

特に驚くべきことは、つけていた暦で漂流生活の一周年が

到来したことを知ったとき、彼は一年間のバランスシートと

損益計算書をつくってそれを眺め(経営)、

反省したり感謝したりしている(精神生活)。

 

たった一人になってもこれだけのことが

全部自分でできるのが、当時のイギリスの

『中流』というものであり、この中流が世界最初に

発生したからこそ、そのときから100年後に

イギリスは世界一の大国となったのである。

 

先に挙げたクルーソーの父親の言葉の中に

『われわれがイギリスでしているようなこの中流の生活』

とあるが、父親が礼賛したイギリス中流階級の生きは

『人に頼らず計画的に生きていける』という

クルーソーの孤島での生活と同じ思想に

立脚していることを指摘しておきたい。」

 

この文章は孤島におけるロビンソン・クルーソーの

生活態度のなかに織り込まれている

「中流」の生き方を具体的に描写しています。

 

この文章を照らして自分の生き方を眺めてみたら

自分に「中流の生活」が身についているかどうかを

確かめることができ、有益だと思います。