前々回、京大IPS細胞研究センター長、山中伸弥教授が

2008年、母校の神戸大学の入学式で

記念講演をしたときのお話を

抜粋させていただきました。


今日はその続きを抜粋させていただきます。


「これで踏ん切りがつかなくなって、

どうしようと思ったところに、

奈良先端科学技術大学院大学が助教授(准教授)

を募集している広告を雑誌で見ました。

『これが次のあきらめる方法だ』と考えました。

公募ですからコネクションもない私が

採用される訳はないし、

今度こそ基礎医学を諦めようと。


ところが応募すると、驚いたことに採用となりました。

あの時父親が母親の夢枕に立たなければ、間違い

なく研究はやめていましたから、

これも『塞翁が馬』だと思います。


この大学はアメリカの状況に近く、

施設だけでなく、すばらしい研究者がおられます。

そこで先ほどのPADという病気をなんとか克服して、

もう一度やってみようかと思うようになりました。


研究者としては一旦死んでいるので、

どうせ神様が何かの気まぐれで研究の場を

与えてくださったのであったら、

何か他の人がやらないような、

難しい研究をしようと。


それで始めたのが、今回の皮膚の細胞から

iPS細胞を作る研究です。

それからは、辛い時期は必ずいつか、

いいことになるのだと思うようになりました。」


思えば、「何か他の人がやらないような

難しい研究をしよう」という決意が世紀の

大発見につながったのですね。

「辛い時期は必ずいつか良いことになる」

というの言葉は悩める多くの人にとって

大きな励みになると思います。