邱永漢さんの著作の中に
『固定観念を脱する法』という本があります。

昭和58年に、日本経済新聞社から
刊行された2回目の全集のトップを切って
発刊された本です。

私は昭和18年生まれですので、
ちょうど40歳になったときに
この本を本屋さんで見つけました。

当時、邱さんの著作を
次から次へと読んでいたのですか、
この本だけは買うのはよそうかなと思いました。

『固定観念を脱する法』という
タイトルの意味がピンとこなかったのです。
でも、邱さんの本だから、
役に立つことが書かれているかもしれない
と思って買いましたが。

いまこの本のページをくると、
次の文章に目がとまります。

「ボイラーにアカがたまるように
年月がたつと頭のなかに固定観念が蓄積されてくる。
人間は年をとると、経験が層をなして積み重なり、
また行動半径が固定化してくるからである。

経験を積んだ年代層は、
その分だけ自身を持っていることもあって、
それを受け入れようとする代わりに
拒否反応が示す。
『自分に理解できないことに
拒否反応を示すようになったら、
老化現象と考えよ』と、
私は絶えず自分に言いきかせているので、
何か自分にわかないことが起こると、
これはもしかしたら新しい現象ではないかと
一応は疑ってみる。」

53歳のころに自分の中で起こっていた
パソコン操作への拒否反応など、
今から思えば、老化現象というほかないものです。

40歳の時にはピンとこなかった
「固定観念から脱する」ことの必要性、
68歳の私には切実なテーマです。