『文藝春秋』創刊90周年記念 2月特大号に
丹羽宇一郎前中国大使の手記「日中外交の真実」が
掲載されたので、すぐ手に入れて読みました。 

丹羽さんには、尖閣諸島問題を巡る日本と中国の対立に
巻き込まれ、たいへんご苦労なことであったと思っていますが、
私が関心を持ったのは、伊藤忠商事の会長を務め、
対中国ビジネスにも取り組んで来られた丹羽さんが
いまの中国ならびに中国人についてどのような見方を
されているかということでした。

そうした関心を持って、丹羽論文を読んだ私にとって
最も興味のあったのは次の文です。 

「なぜ、『反日感情』は生まれるのか。
日中戦争の記憶や過去に行われていた
反日教育の影響も大きいのでしょう。
しかし尖閣諸島をめぐる経緯はきっかけに過ぎず、
その背景には、中国人が日本に対して抱く 
中国人が日本人に対して抱くある種のコンプレックスもあると思う。

現在GDPは世界第二位となった中国だが、
その実態はとても経済大国とは言えない状況にある。
1%の富裕層が富の多くを手にしており、
都市部と内陸部、資本家と労働者の間では、
日本では考えられないほどの経済格差が依然として存在する。
果たして国際社会から信頼される民主的な経済大国に
相応しいかどうか考えてみる時期であろう。

一方日本は不況が叫ばれて久しいものの、
国民一人当たりのGDPを比べると、中国は日本の十分の一である。
また、日本の工業製品は高い品質を誇り、
国際経済から高い評価を受けている。
こうした日本の国際的地位に対する妬みや反発が根底にあり、
日本製品ボイコットのような反動に繋がった面があるのではないだろうか。
しかし、こうした感情は、反面、日本に対する高い評価でもある。
中国社会が一層成熟し、自信をつけ、日本との交流がより深まることで、
妬みや反発は、経緯や信頼に反転する可能性を持っているのである。」

この文章を読んで、私は自分が描いている中国の現状、
そして中国人の心の中にある対日本人への感情、
が凝縮して表現されていると思いました。

さらにこの文章には、 今後中国人が経済的に
より豊かになることでや日本との交流が深まることで、
日中の対立が信頼に変わりうることが述べられ
 生産的であるとの感想を持ちました。