自分が初めて株を買ったのは43歳。
そしていまなお株を楽しんでいる自分は71歳。
数えたら、28年の間、株を続けています。

こういう私のような人間に向けられた
邱先生の言葉に出会いました。

「年をとると、職場からは締め出されるし、
商売を続けるチャンスも少なくなりますから、
あとは金利を稼ぐか、投資をしてお金をふやすよりほか
なくなります。
だから多くの年寄りたちはコツコツ貯めたお金を
銀行に定期預金をしてその利息で暮らしています。

株を買ったり、他人のやっている事業に出資した方が
うまく行くと、実入りが多くなりますが、
失敗すると元も子もなくなってしまうので、
大抵の人は大事をとってそういう冒険は
やりたがりません。
いつの時代でも株で儲けるより
元本の保証された定期預金を選ぶ人が多いのです。


金利は老人にとって大事な収入源を占めています。
低金利政策とはそうした老人から
収入をとりあげる政策ですから、
一方で福祉政策をほどこしながら、
もう一方で老人いじめをやっているようなものですね。

それに比べると、株をやっている老人は
そんなに多くはありませんが。
株のような相場に左右される
不安定な投資に身を任せるくらいだから、
冒険することを怖がらない人だし、
若い時からそうした経験を積んだ、
頭の訓練のできた人だと言うことができます。

但し、株式投資は経験を積んだからといって
上手になる種類のものではありません。
もし経験が株式投資の役に立つなら兜町に
出入りする人たちは年の順序にお金を持っている筈です。
それがそうなっていないのは、
株式市場では同じことが同じ銘柄に起るよりも、
これまでに起ったことのないことが次から次へと
起ってくるからです。

そういう新しい変化を読むことができたら
年齢と無関係にたちまちベテランになってしまいます。
若い時からそうした要領を身につけた人は
お金でお金を生むコツを身につけたようなものですから、
年をとってもお金の心配をしないですみます。」
(邱永漢著『もしもしQさんQさんよ』)

この一年、皆様、ご愛読ありがとうございました。