「新しい事業を創り出す」ことを
を負担に感じる理由の一つとして
「先を読むことの難しさ」をあげましたが
「失敗する可能性が大きいと感じる」
ことも理由の一つです。

新規事業を企画する仕事につくと
最初は決めたテーマついて、
実状を調べることになります。
知らないことを知ることは楽しいことです。
好奇心が働いて嬉々としていろいろ調べます。

ところが事業プランを立て、
うまく行くかどうかを考える段階になると、
うまく行かない要因が次から次へと浮かび、
他方、うまく行く要因はみつかりません。

「やってもうまく行かないのではないか」
そんな予感が担当者の頭に走ります。
無理してバッターボックスの前に立っても
空振りに終わるのなら
バッターボックスの前に立つのは
やめておこうということになります。
人間の自然な感情です。

こういう心理も働いて、
人は「創業」の仕事を重荷に感じ、
できることならこういう難しい仕事から
逃げ出したいという気持ちになるのです。

実際、私が新規事業企画の仕事をしたときの
会社内の動きをふりかえると、
新規事業企画部門に大勢の人が集まり、
さまざまな事業プランを立てましたが、
ほとんどの人はそこで終わり、
プランを実行に移すところまでは
行きませんでした。

「守成」の仕事に比べたら
「創業」の仕事は比較にならないくらい難しい、
というのが私の実感です。
「仕事は楽しんでやるものだ」とは思いますが、
「創業」の仕事である「新規事業づくり」に
取り組んでいたとき、「楽しいなあ、面白いなあ、」
と思ったことはあまりません。
心の面で苦しみを感じることの連続で
できることならこういう仕事からは
早く逃げ出したいと思っていました。

「創業」の仕事は今の世にない
新しいことを生み出すことで、
ワクワクするような心のふるえを
感じてもいいはずです。
ところが、実際は「しんどいなあ、苦しいなあ」
という感情の連続です。
どうして、そんな気持ちになるのでしょうか。

理由の一つは、「創業」には
先読みが必要で、これがとても難しい
ということだと思います。

これまでないことを生み出すには
これからの時代のなかで、世の人に
迎え入れてもらう必要があり、
そのためには、これからの時代の中で
必要とされるものを探り当てることが必要です。
つまり先読みが必要なのですが、
これが難しいのです。

私たちはこれまで通ってきた道のことは
よく覚えています。
あの頃はこうだった、ああだったと
昔のことならいくらでも思い出すことができます。

ところが、これから先のこととなったら
さっぱり頭が働きません。
もともと、これから先どうなるのかと
いうようなことは普段、考えたことがありません。
そういうやりなれないことをして、
見えない将来を描きだす必要があるので
「創業」の仕事に大きな負担を感じるのだと思います。

「創業」と「守成」という言葉があります。
辞書で調べると
「創業」とは「事業を始めること」
「守成」とは「創業の後を受け、その事業を固め守ること」
とあります。

「守成」の仕事はしっかりと基盤が出来きた事業を
継続、発展させることです。
今日の仕事が明日の仕事につながり、
また明日の仕事が明後日の仕事につながり
継続性があり、体験の積み上げがあります。

自分などが22歳から49歳までの
会社生活のなかで体験したことを振りかえると
22歳から40才までは「守成」の仕事の連続でした。

一方、40歳から49歳から体験したのは
新規事業を考え出す仕事で
「創業」の部類に属す仕事でした。

「創業」の仕事とは世の中で受け入れられる
新しい事業を創り出すことです。
考え出した事業がうまく世の人から
受け入れられるかどうかは
実際にやってみないとわかりません。
うまく受け入れられたら合格ですが、
人からソッポを向かれたら不合格です。
まことに心もとないことです。

どんな事業にも
「創業」のときがあれば
また「守成」のときもありますので
両方の知恵が必要ですが、
たまたま「守成」の仕事を続けたあと
「創業」の仕事に従事したことから言うと
「創業」のほうが「守成」にくらべて
はるかに難しいです。

「創業」の仕事は難しいだけに
実際にチャレンジすると視野が広がり、
物事についての認識も深くなります。
ですから友人たちにはチャンスがあれば、
すすんで「創業」の仕事に
取り組むことを奨励しています。

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