「経済はめまぐるしく変るので
過去の経験は役にたちません。
経験はかえって邪魔になる場合があります」
と邱永漢さんはよくおっしゃいます。

たしかに、不動産を買う場合
頭金とローンの関係をどうするか
といったことについては
昔の方法はいまの時代には通用しません。

インフレの時代はお金の回りもいいですから、
頭金は1割とか、2割とかにして、
あとは銀行からの借金でまかなうといった
方法がとられましたが、デフレの時代は、
お金の回りが鈍いですから、極力、頭金を殖やし、
返済の必要なローンは少なくする必要があります。

こうしたことはいまの時代の傾向を考え、
決めなければなりませんが、こと、賃貸にまわす
不動産はどんなものがいいのかの基準については、
前々回からご紹介してきた「投資向け不動産が
満たすべき要件」が不変の鉄則だと考えています。
こういう要件を満たす不動産には、
不景気のときでもテナントが入るからです。

実は、昨年のこと、株のことをテーマにしたセミナーに
参加された若い女性が次のように話されました。
「東京周辺の不動産を手に入れたいのですが、
とても自分の力では手に入れることはできません」

私はこの話を聞くなり、20数年前の自分を
見ているような気持ちになり、そのあとすぐ
自分が最初に買った渋谷のマンションに案内しました。

また、その場で、そのマンションを手に入れたときの
実状をお話し、渋谷の次に、東京駅前とか、横浜の関内とかの
マンションを買い、うまく言っていることを伝え、
これらのマンションを見て回ると
「テナントが途切れないマンション」の実例に接し、
不動産選びの感覚がつかめるのではと思い、
これらのマンションの「見て歩き」を提案しました。

その女性はその場で参加したいととおっしゃいましたので。
昨年、不動産投資に関心のある方たちに声をかけ、
ご案内しました。先日のこと、そのとき参加いただいた
男性の方と、新橋の駅でばったり出会いました。

「あのときは参加いただいてありがとうございました」
と私が声をかけると、その方から
「戸田さんに連れていっていただいたようなマンションを
手にいれたいと思って、いま不動産屋さんに
探してもらっているところです。まだ決まってはいなのですが」
と近況を伝えてくださいました。

自分のささやかな体験が他の人にも
多少、役に立っているみたいだと感じ、
楽しい気分にさせていただきました。

邱永漢さんが前にお書きになった
『悪い世の中に生きる知恵』とか
『不動産が一番』で紹介されている
“投資向きマンションが満たすべき要件”
を整理すると次のようなことになりましょうか。

(1)駅に近い交通至便なところにあるなど、
ロケーションがよいこと。
(2)住居用に建てられたものであっても、
事務所用に転用のできるものであること。
(3)事務所にしても住居用にしても、
マンションのある町名が一見、高級そうに響くところにあること。
(4)建物が立派そうに見えること。
(5)開発して売りに出す会社が信用のある会社であること。
(6)建設会社が信用のある会社であること。
(7)マンションの管理システムがうまくできていること。

誰でも最初は右も左もわからないところから始めます。
私なども邱さんのアドバイスに従い、面白半分で
六本木、赤坂、渋谷の順でマンションを見て回りましたが
ロケーションがいい場所というイメージがつかめず、
結局、「“マンションはロケーションがよいことが第一”と
おっしゃっている邱永漢さんが、ご自分の事務所を
お建てになっておられる場所は“ロケーションがいいところ”
になるのではないだろうか」などと考え、
邱さんの東京の事務所が建っている
渋谷区渋谷一丁目にあるマンションを買いました。

それから20数年の年月がたち、私はそのマンションの
管理組合の理事長になり、毎月1回、理事会のため
マンションに出向いています。
そんななか、ある日、理事仲間の一人から、
聞かれました。
「戸田さん、“シブイチ”ってご存知ですか?」
何のことかわからず、首をかしげていますと、
「渋谷一丁目のことをちぢめて言う言葉で、
この地域は人気の高いゾーンなんだそうですよ」
と教えてくれました。

そこで“シブイチ”について検索すると、
いろいろな解説が出ていて、渋谷一丁目が
いま人気スポットの1つになっていることがわかります。

どうしてこういう話をするかと言いますと、
わりに華やかなムードのあるところのマンションは
景気、不景気にかかわらず、
テナントがいつも入るということです。

これは実際にマンションを買い、
賃貸に出し、長い年月をかけて知ったことなので
「価値のある情報」だと思っています。
ですから、いま不動産投資に関心を持たれる方には
このことをお伝えしておきたいと思っているのです。

私が年をとった時への備えとして
ワンルームマンションを買ってから
27年くらいの年が経ちました。

マンションを買うときに、具体的な手引書になる
文章が掲載されたのが
『悪い世の中に生きる知恵』
(日本経済新聞社。昭和54年)です。
この本は昭和58年に発行された
『人生後半のための経済設計』より4年前に発行され、
邱さんはこの本で定期収入を得るためのマンションの条件として
五つの要件を挙げられました。

(1)駅に近い交通至便なところにあること
(2)住居用に建てられたものであっても、
事務所用に転用のできるものであること
(3)事務所にしても住居用にしても、
マンションのある町名が一見、高級そうに響くところにあること、
(4)建物が立派そうに見えること、
(5)建設会社が信用のある会社であること

私は自分が買おうとするマンションが
この5つの条件を満たしているかどうか
チェックし、だいたいかなっていると
思って購入を決意しました。

こうして投資向けのマンションを買いました。
その後、10年ほどたった頃に不動産の価格が
暴騰する”バブルの勃興”があり、
またその4,5年後に”バブルの崩壊不動産”が
激しく値を下げました。

むろん、私のマンションもこの経済の大変動の
影響を受けましたが、さしたる問題もないまま
今に至っています。

その一番の理由は上に述べた条件を
満たすマンションを選んだからだと考えています。
ちなみに、バブルが起こる直前で
邱さんが発行された『不動産が一番』
(実業之日本社。昭和62年12月)には
”買えるマンションの条件”として
(1)ロケーションがよいこと。
(2)あの会社が企画したものなら、まず間違いなかろうと
買い手を安心させる会社が開発して売り出したものであること。
(3)一流の建築会社が工事を請け負ったものであること。
(4)マンションの管理システムがうまくできていること。
の四つがあげられています。
「掃除や修理がいい具合に行われて」マンションがうまく
管理されていることが4つ目の条件として加えられています。

このように整理されてた投資向きマンションの
具備すべき条件は平成17年の今でもそのまま
通用する要件だと感心しています。

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