中国株のことを考えるとき
いつも頭をよぎることがあります。
中国の会社の株は中国人も買うし、
日本人も買いますが、
中国株の購入するとき、
中国人と日本人のどちらが
気軽に株を買うかといえば日本人で、
中国人は本当に株が高くなるかなあと
いぶかりながら買っているのではないか
ということです。

というのは、私たち日本人には
戦後の頃は貧乏暮らしをしていたけど、
いつの間にか様子が変わって、
世界の金持ちの国になった
という過去があります。

そして日本人は、自分たちが
金持ち国になったことにについて、
外国から原料を買い、それを加工を施し
付加価値のある製品を造り、それを売って
お金を儲けるようになったからだ
ということを知っています。

ですから日本人は、
中国も工業化が進めば、
所得の向上、マイカー、
マイホームブームの到来、
不動産価格の高騰と株高など
日本で起こったのと同じことが
中国でも起こるのではないか、と考えます。
ですからこのように考える日本人は
わりに気軽な気持ちで中国株を買います。

その日本人が、貧乏国から
金持ち国になる過程で、
自分たちの国の経済発展と自分たちの
生活の向上を的確に読んだかといえば、
そうではありません。

イギリスやアメリカの人で
先見性のある人たちは、
日本はこれから大きく発展するぞと言っても、
それに同調するより、自分たちには弱点があるから、
そうはならないだろうと否定的な見方をする人のほうが
多かったのです。

ですから、いまは、多くの日本人が
「中国は発展する」という見方をしますが
その中国で働いている中国人は、
外国人はいろいろ言っているようだけど、
自分たちの国が先進国と並ぶようなことには
ならないのではないかと見ているのではないか
私はそう思っています。

株を買う以上はいい成績をあげたいですが、
いい成績があがるようになるかどうかは
株を買うときどういう姿勢をとっているかと
関係していると思います。

株のことは証券会社のセールスマンが
詳しいと考え、彼等のアドバイスにしたがって
株を買う人がいます。

また、株のことについて発言し、自身も株を買い、
いい成績を挙げている人が推奨している株を
選ぶのがいいと考え、そうした人の発言に
耳を傾けて、株を選ぶことにしている人がいます。

あるいはまた、他人の意見は十分参考にするけど、
最終的には自分で考え、自分の判断で
買うという人もおられます。

このように株を選ぶときの態度は
人さまざまですが、他人の言に従って
株を選ぶと、うまくいかなかったとき、
「あいつのせいだ」と責任を他人に
持っていくことになりがちです。

人間という生き物は
自己防衛本能が発達していて、
自分に落ち度があっても、
自分に非があったことを認めません。
「あいつがあんなことを言ったので失敗した」
と考えがちになります。

こうした作業のくり返しているだけでは、
先見力はつかないと思います。
うまく行かなかった要因の1つは
信頼を寄せている人の見通しが
悪かったことにあるとしても
そういう人の発言に従うことにしたのは
自分で、そういう自分の態度に
根本的な問題があると考えることから
可能性が生まれます。

そのように反省する態度から、
なぜうまくいかなかの反省が起こり、
そうした内省から先を見る目が養われる
道が開かれるからです。

はじめて株を買うときは
右も左もわかりません。
ですから先輩の人の意見を参考に、
銘柄を選ぶことになります。

私の場合がそうでした。
たまたま会社の図書館に入って
雑誌をパラパラめくっていたら、
是川銀三さんと邱永漢さんが対談し、
これからは新日鉄の株がいいと
おっしゃっていました。

是川銀三さんと邱永漢さんがといえば、
ともに自分が心の底から思っている
ことしか言わない人です。
この2人がともに1つの会社を推奨している
ということは注目に値すると思いました。

当時、私はその新日鉄につとめ
当時、不況で鉄冷えの街と言われた
八幡製鉄所に膨大な遊休地の開発に
頭を痛めていて、そんな会社の将来を
明るく展望することはできませんでした。

ただ、是川さんと邱さんはともに
私にとっては畏敬の対象で、その2人が
一致して新日鉄株という1つの株を推奨し、
私も以前から株を買ってみたいと思おり
新日鉄の株価は300円程度で
買いやすかったこともあり、
私は新日株を買いました。

その後、株価が少し上がったところで、
すぐ売り、次は半導体の時代と考え、
NEC株に乗り換えました。
私には鉄鋼界は斜陽化しているという
観念が頭から離れなかったのです。

鉄鋼業が斜陽化業種であるという認識は
是川さんや邱さんも同じでしたが、お2人は
鉄鋼会社が設備を削減し、いま生産能力を
大きく下げているが、たまたま世界中で
鉄の需要が起こっているので、鉄の価格があがり、
鉄鋼会社が久しぶりに業績をあげるので、
買いとおっしゃっていたのです。

その後、どうなったかと言いますと
新日鉄株は900円まであがりましたので、
是川さんや邱さんの予想が的中したことになります。

一方、私も、鉄鋼業界に明るい材料が出ていることは
知らないではなかったのですが、何しろ、斜陽化している
という見方にとらわれ、新しい動きに目を向けなかったので
その後の上昇を予測できず、チャンスを失しました。

的確に先を読むには、1つに観念にしばられず、
あたらしく起こっている変化に目を向け、
柔軟に対応することが大切です。

邱さんは、その後、このときのことを、
ある本で「君子、豹変せざれば株で儲からず」
とお書きになりました。

執筆者:戸田敦也(2006年02月19日)

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